Vol.241 Dave Sinclair Live 〜 新宿ピットイン
新宿のピットインで「Real & True Day Party」が開催されました。
エレクトロニカのユニット「Nadine & Charlie」や友人のユニットなども参加するパーティ形式ですが、初日の今日は急遽Dave Sinclair氏の演奏が決定し、Neil Saunders氏と共に数曲のピアノソロを演奏してくれました。ボーカルの入らないビュアなビアノ演奏でしたが、写真撮影している手が自然としばらく止まってしまうくらいすばらしい時間が流れました。
Dave Sinclair氏と言えば、イギリスの代表的なプログレッシブロックバンドであるキャメルやキャラバン他、またRichard Sinclairsなど多くのアーティストとの活動で知られていますが、ソロでのピアノ演奏はいつ聴いても透明感があり心惹かれるものがあります。
日本では「Moon Over Man 30th Anniversary Edition」(デジタル・リマスタリング)が発売されます。その古い音源からのリマスター … 気の遠くなるような細かい復元作業に職人技を発揮した旧友には拍手を送りたいと思います。また急なスケジュールにもかかわらず快く演奏してくれたDave&Neil、裏方できめ細やかなサポートを続けている友人にも感謝いたします。
Dave Sinclair / Piano、Neil Saunders / Symthesizer
1. Wanderlust、2. Here To Stay、3. Back For Tea、4. Always There(アンコール)
マッチング・モウルの一枚目のアルバム「そっくりモグラ」のメンバーでもある、Phil Millerは来月バンドと共に来日する予定です。
「Euro Rock Press」11月号には、ロングインタビュー前編が掲載されています。
「Moon Over Man 30th Anniversary Edition」(デジタル・リマスタリング)
Vol.240 コラージュとフォトモンタージュ展 〜 東京都写真美術館
恵比寿の東京都写真美術館で「コラージュとフォトモンタージュ展」が12/17まで開催されています。コラージュというと写真やイメージを切り取って、別の紙などにはりつけてひとつの作品を作りあげるというものですが、この展示は「写真」という側からの視点で作品が構成されています。
会場で最初に目についたのは、絵画主義の代表的な作家ヘンリー・ビーチ・ロビンソンの「夜明けと日没」(1885)という大きな作品。室内の日常のひとこまであるのに、とても絵画的でこれも数枚が重ねられているとのことです。コラージュやフォトモンタージュのような技巧が使われるようになったのは写真が発明されてからまもなくということですが、日本では「横浜写真」というものが古くからあります。これは、外国人向けのポストカードや写真に彩色をしたり、コラージュやフォトモンタージュを施したもので個人的にとても興味のあるものですが、中には人目をひくことが目的のものもあり、アート性よりも多少商業的な要素が強いものも見られます。今回は、あまり見ることはできないと思われるいくつかの作品が展示されていました。
カメラという移りゆく光をとらえる箱が誕生してから100年…20世紀になるとキュピスムの芸術家たちがコラージュなどに写真を使い始めました。その中でも意識して写真を使ったのはマン・レイだと言われています。コラージュだけでなくフォトグラムやソラリゼーションというような独特の写真技法を駆使して非現実的な世界を表現しました。今もパリにあるカフェ「ラ・ロトンド」でモンパルナスの人気者キキに出会ったことから作られた作品「アングルのヴァイオリン」(1924)。美しい女性の背中にFの文字を配した作品は、たぶん多くの人が見たことがあるでしょう。その他にも「モンパルナスのキキ」(1924)「カザティ公爵夫人」(1922)、チェコの前衛写真家ヤロスラフ・レスレル (Jaroslav Roessler 1902-1990)の「アコーディオン弾き」などを見ることができます。マン・レイの作品や自身については、書くと長くなるのでまた別の機会に…。
日本でもこの時代、アヴァンギャルド造影集団などの前衛的グループがいくつか活躍し、独特の幻想世界を表現しています。戦前の代表的な前衛写真家 平井輝七(1900-1970)の幻想的でシュルレアリスム的な作品「月の夢想」「モード」「生命」他、1940年代はシュルレアリスムが弾圧されてきましたが、その後1950年代には日本でも「国際主観主義写真展」と題された展覧会が開催されました。これは表面的ではない内側の心理性をも自由に表現しようとする試みであり、写真展には奈良原一高なども参加しています。今回の展示作品は「日蝕」。また現代のアーティストである草間彌生や横尾忠則などの作品も一堂に見ることができました。
1980年代以降、技術の進歩によってパソコンが普及しデータ処理が簡単にできるようになり、フォトモンタージュの技術もデジタルに移行していきます。現在ではデジカメで撮った写真を素人でも気軽に加工できるようになったことはよいことですが、写真の作品性というものをより考えるようになってきた今日この頃です…。
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【コラージュとフォトモンタージュ展】 東京都写真美術館
- Collage and Photomontage - 2006年11月3日(金・祝)→2006年12月17日(日)
■第1部 序章 写真がコラージュされ始めた時期
写真の黎明期にそのころの写真では技術的に不可能な事を表現するために、合成(コラージュ、フォト・モンタージュ)することにより写真家の意図に沿った、表現として完成度の高い作品をめざしました。
■第2部 前衛美術との関係 20世紀初頭の前衛美術運動との関係
ダダ、シュルレアリスム、構成主義といった20世紀初頭の前衛美術は様々な美術的な技法を取り入れていますが、特に写真のコラージュ、フォト・モンタージュを使った作品を多く見ることができます。写真を使う事により、作品によりリアルな社会へのメッセージや風刺、超現実性といった要素を作品の中に取り入れていきました。
■第3部 主観主義写真と現代美術との関係 現代美術との関係
現代のコラージュ作品は写真家だけではなく、画家や版画家といった他のメディアの美術家にも使われています。描くと言う行為よりの既存のイメージである写真を使ったり、貼り付けたりする行為によって作品を再構成し、新たな作品を創り出していきました。
すぐわかる作家別 写真の見かた
フォトモンタージュ 操作と創造―ダダ、構成主義、シュルレアリスムの図像
ジョン・ハートフィールド―フォトモンタージュとその時代
Man Ray's Paris Portraits: 1921-1939
Vol.239 プラネタリウムでチェンバロを聴く 〜 タイムドーム明石
築地にタイムドーム明石(郷土天文館)というプラネタリウムがあります。
中央区の施設でプラネタリウムのほか、郷土資料館や区民ギャラリーも兼ね備え昨年オープンしたばかりです。プラネタリウムに投影された星空の下でチェンバロを聴くという興味深い演奏会が開催され、知人からのご招待もあり撮影も兼ねて訪れました。
このプラネタリウムは最新のデジタル技術によって、過去の星空や太古の地球など未知の世界までを表現できるそうです。そのドーム径は12mと大きく開放感があり星空だけでなく半球面を利用しさまざまな上映も可能です。今日は大きなドームの下に、黒塗りに金箔で日本文様が施されたフレンチスタイルのチェンバロが置かれていました。このような貴重な楽器を間近に見るのも初めてですが、その音が響く構造〜歴史の説明も詳しくあり、とても親しみやすい会であったような気がします。
はじめは星空が投影された下で、チェンバロ奏者渡邊温子さんによる演奏…
・J.S.バッハ(1685-1750 ドイツ)
プレリュード(平均律第1巻第1番)、メヌエット(アンナ・マグダレーナの音楽帳より)、ミュゼット(同上)
・J.スパニリェス(1644-1712 スペイン)
めでたし、海の星
・F.クープラン(1668-1733 フランス)
さまよう亡霊、夜明け
・W.A.モーツァルト(1756-1791 オーストリア)
鍵盤楽器のための作品 K.1a,1b,1c,11d、鍵盤楽器のための作品 K.33B、トルコ行進曲
その後チェンバロ製作家の安達正浩氏より、チェンバロの制作についてや歴史的な解説をしていただきました。普段触れる機会があまりない楽器について、丁重に解説があり終了後もみなさんからのいろいろな質問に答えてくれました。引き続きチェンバロ演奏の後は、大きなドームに星のプログラム「星の王子さま」が上映されました。そこに広がる物語は何か懐かしい感覚がしたのは不思議です。大きな半円形のドームをフルに活用しデジタルによる現代の技術が生かされている場所は、今後もいろいろな企画が展開できそうです。それに公共の施設だけに利用料もリーズナブルで子供向けの企画も多くあるとのことです。
この施設は、聖路加タワーの真下にありとてもわかりやすい場所です。築地駅からプラネタリウムに向かう道を行くと、目の前に聖路加タワー(地上51階)が姿を現します。銀座からも近く天文や星空、宇宙好きな人にはちょっとした穴場的な施設かもしれませんね。また、築地というと日本一の魚河岸という第一印象がありますが、周辺地域同様に東京のインナーハーバーとしての開発が進んでいます。聖路加ガーデンをはじめ、シニア向けの住居や施設や隅田川沿いには親水公園も整い、東京のウォーターフロントとしても整備されつつあります。銀座からでもちょっとした川沿いの散歩コースに立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
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♪星空とチェンバロによる ◆煌めきのアンサンブル◆
・チェンバロ 渡邊温子さん、チェンバロ製作家 安達 正浩さんによる解説
・プラネタリウム・オリジナル・プログラム サン=テグジュペリ「星の王子さま」
原作のイメージをプラネタリウム専用にアレンジした臨場感溢れる作品の上映
・タイムドーム明石(郷土天文館) 中央区明石町12-1
・地下鉄有楽町線・新富町 日比谷線・築地駅 聖路加病院向い
タイムドーム明石(郷土天文館) 中央区ホームページ
プラネタリウムホールの貸し出しやプラネタリウムの貸切投影も可能です。
チェンバロ弾きのひとりごと(渡邊温子)
クラヴサン工房アダチ
聖路加ガーデン
Vol.237 マリンタワーと氷川丸 45年間の幕が下りる時 〜 横浜港
横浜港の前の山下公園をはさんで、街のシンボルともいえるマリンタワーと氷川丸があります。長い間親しまれてきて45年(1961年〜)…港周辺を一望できる最高のビュースポットとして、憩いの場として活躍してきましたが、今年の12月25日に双方の営業を終了することになりました。マリンタワーは高さ106m、灯台を意識したデザインで一応その機能も併せ持つことから、ギネスブックには最も高い灯台として登録されているそうです。
私にとって横浜という場所は、海あり美術館ありアートスペースやJAZZがあり、そして修復された赤レンガ倉庫や様々な文化活動の拠点にもなっていることから若い時分から注目し、東京に住みながらも何度も訪れている愛着ある場所です。今でこそ街をあげての都市整備や、企業や多くの団体などの誘致も活発になり文化の発信地として益々発展しつつある場所ですが、数十年前の当時は中華街と港のみえる丘公園、そして山下公園とマリンタワーが点在しているばかり…。それでも、写真を撮るものには魅力的に見えた朽ち果てていく赤レンガ倉庫周辺や、古い建物が多い街並みが好きでよく遊びに行ったのでした。
今では交通網も整備され、港のすぐ前の海沿いにみなとみらいまでの遊歩道がつながりとても便利になりましたね。中華街〜横浜港(山下公園)〜赤レンガ倉庫〜みなとみらいの道は、私にはちょっとしたウォーキングコースにもなっています。
県庁周辺の建物は歴史あるものも多く、建てなおされる際もそれらの一部を生かしたり保存されるなど、街の景観が損なわれないような進化をしているように感じられます。そんな街のシンボルが営業終了というと、少し寂しいものもありますが、その存在が全くなくなってしまうようではないようですね。
氷川丸は、係留された船舶としては初めて横浜市指定有形文化財にも指定されていることもあるのでしょうか? 2009年の開港150周年に向けてリニューアル予定ということです。いろいろな芸術シーンや音楽の発信地としても活発な場所になりつつある横浜の港周辺、今後の展開が楽しみです。
そして、氷川丸では回顧録展が、就航当時は一等船客しか入室を許されなかった一等ダイニングサロンにて行われています。内装などアール・デコ装飾の美しい部屋は、今ではとても貴重だと思いますので多くの人に見てもらいたいものです。こちらも12月25日まで開催ということです。横浜には同じ港でも異国情緒が漂っているのでした。
Vol.238 イプセン・イヤー2006「タリエ・ヴィーゲン」〜 横浜 新港ふ頭
今年はノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの没後100年にあたるということで、数々の関連イベントが催されています。横浜の新港ふ頭では、ノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの叙事詩「タリエ・ヴィーゲン」を題材を題材とした、野外マルチメディア・パフォーマンス「タリエ」が26日まで開催され、今日は友人たちとそのオープニングに行ってきました。巨大スクリーンに繰り広げられる物語は、イプセンの詩の朗読や海をテーマとした映像で、それと同時にダンスパフォーマンスなども組み合わせられています。会場の半円状に広がる5つのスクリーンの中に次々と映し出されるダイナミックな映像を、人々は興味深く見入っていました。
この上映のために造られた特設会場は、大きなクレーンを背景にその場所ならではのコンテナをベースにスクリーンの土台などが組まれています。ストーリーのテーマに沿って、港という場所を最大限に生かした会場作りがされているようでした。ヘンリク・イプセンという詩人の名前や、劇作家として「人形の家」などの作品名は聞いたことがある人はいても、彼について、また作品について詳しく知っている人は案外少ないかもしれませんね。
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イプセンは数多くの詩を残していますが、1862年に発表された「タリエ・ヴィーゲン」は、19世紀初頭に人々の生活が困難を極める時代を背景に、水先案内人タリエ・ヴィーゲンの苦難の生涯が詠われています。リレハンメル・オリンピック開閉会式を演出したことで知られるノルウェー人のプロデューサー、トマス・ホーグ率いるアーツ・アライアンスが、この詩を元に、詩の朗読、海をテーマにした映像、ダンスなどで構成される「タリエ」を制作し、過去2回ノルウェーで上演しています。今回新たに制作された日本版では、伊武雅刀がナレータを務めます。
期日: 2006年11月16日〜26日
会場: 新港ふ頭「タリエ」特設会場(横浜市みなとみらい地区)
Tarje Virgen Yokohama 2006 (タリエ・ヴィーゲン)
イプセン・イヤー
Vol.235 小高い山の上から秋の景色を楽しむ 〜 大室山
以前訪れた伊東の老舗旅館まで義父母の送迎ついでに、大室山方面まで足を伸ばしてみました。平日ということもあり人出も少なくちょっとした散歩日和です。大室山には、ススキの穂が太陽の光に輝き一面に広がっていました。それを見て思わず観光登山用のリフトに乗ってしまった一行…この山のまわりは車で通ることはよくありますが、上からの景色を見るのは初めてです。90歳過ぎの義父でもリフトに乗れば山頂にいけるのはうれしい限りです。
リフトの向こう側からは、小中学生と思われる子供たちがすれ違う人に「こんにちは」と元気よく挨拶している姿も多く見られました。高いところからの景色は人に開放感を与えるのでしょうか?標高数百メートルとはいえ小高い山の上からの雄大な景色を見るために、次々とリフトに乗り込んでいる人たち…心なしか下界に下りるときはちょっとリラックスした気分になれるものです。また遠くの景色を見るということは、目のためにもとてもやさしいことかもしれません。
標高 500m、噴火口直径 300m、噴火口円周 1000m、噴火口のまわりはぐるりと遊歩道になっていて、ちょうど1kmの散策ができます。きれいなお椀を伏せたような形のうえには、見事に丸いクレータ状の大きなくぼみがあり、まさに火口という感じでした。春には山焼きが行われ、夏はこの場所からの花火鑑賞、お正月には初日の出を見ることも…また火口跡の中ではライブなどのイベントも催されているようです。とても大きなくぼみなのに、よく水が溜まって湖にならないものだと単純に関心するばかりですが、このような自然な地形をうまく利用した試みに、たくさんの人の知恵や意識がかかわっていることを感じたひとときでした。
Vol.236 シャボテン公園できままに暮らす動物たち 〜 伊豆
大室山を降り、すぐ近くの伊豆シャボテン公園の広大な敷地の中を動物たちと戯れながら歩いてみました。最初この公園はサボテンだけがたくさんある場所だと思っていたのですが、大きな温室だけでなく動物や鳥たちが自由に生活しているスペースがあちらこちらにあるのです。周囲の歩道には孔雀やペリカンなどが放し飼い状態で歩き回っているので、ふいに目の前に現れて驚かされます。まぁ、孔雀たちのほうがビックリしているかもしれませんが…。
もちろん、いくつかの温室には1,500種類の世界中のサボテンや多肉植物が生育されていて、とても珍しいサボテンもあるそうで、季節によっては花の咲いているところを楽しめるとのことでした。漢字では「サボテン」を「仙人掌」と書くのを知っていますか? 英語名は「cactus」カクタス。
そして入り口近くにあるバードパラダイスでは、この公園最長老と言われているハシビロコウのビルおじいさんが…少し寒くなってきたせいか年のせいなのか、じっと動かないでこちらを見ていました。今話題のキャラクター的存在のハシピロコウですが、実物を見るのは初めてでこんなに大きな鳥だとは…日本ではなかなか出会えないものですね。ショーにもでているチンパンジーは、お疲れなのかちょっと物憂げな顔をしているように見えたのは気のせいでしょうか? こちらも笑うわけではないので何を考えているのか微妙なところですが…。
その他にもフラミンゴや頭の冠がきれいなツルなど、17種もの珍しい鳥たちがフライングゲージの中で自由に暮らしていました。動物を見に行くというのも久しぶりですが、檻の中にいるのではない動物たちと触れ合うというのは、動物園とはまた違う感動があっておもしろいものです。ペットブームと言われる今、家で動物を飼っている人も増えている昨今ですが、ここでは動物中心の生活パターンやペースにあった時間が流れているような気がします。自由な雰囲気で過ごしている動物たちは、中にいる人を和ませてくれていました。