Vol.240 コラージュとフォトモンタージュ展 〜 東京都写真美術館

Vol.240 コラージュとフォトモンタージ

恵比寿の東京都写真美術館で「コラージュとフォトモンタージュ展」が12/17まで開催されています。コラージュというと写真やイメージを切り取って、別の紙などにはりつけてひとつの作品を作りあげるというものですが、この展示は「写真」という側からの視点で作品が構成されています。
会場で最初に目についたのは、絵画主義の代表的な作家ヘンリー・ビーチ・ロビンソンの「夜明けと日没」(1885)という大きな作品。室内の日常のひとこまであるのに、とても絵画的でこれも数枚が重ねられているとのことです。コラージュやフォトモンタージュのような技巧が使われるようになったのは写真が発明されてからまもなくということですが、日本では「横浜写真」というものが古くからあります。これは、外国人向けのポストカードや写真に彩色をしたり、コラージュやフォトモンタージュを施したもので個人的にとても興味のあるものですが、中には人目をひくことが目的のものもあり、アート性よりも多少商業的な要素が強いものも見られます。今回は、あまり見ることはできないと思われるいくつかの作品が展示されていました。
カメラという移りゆく光をとらえる箱が誕生してから100年…20世紀になるとキュピスムの芸術家たちがコラージュなどに写真を使い始めました。その中でも意識して写真を使ったのはマン・レイだと言われています。コラージュだけでなくフォトグラムやソラリゼーションというような独特の写真技法を駆使して非現実的な世界を表現しました。今もパリにあるカフェ「ラ・ロトンド」でモンパルナスの人気者キキに出会ったことから作られた作品「アングルのヴァイオリン」(1924)。美しい女性の背中にFの文字を配した作品は、たぶん多くの人が見たことがあるでしょう。その他にも「モンパルナスのキキ」(1924)「カザティ公爵夫人」(1922)、チェコの前衛写真家ヤロスラフ・レスレル (Jaroslav Roessler 1902-1990)の「アコーディオン弾き」などを見ることができます。マン・レイの作品や自身については、書くと長くなるのでまた別の機会に…。
日本でもこの時代、アヴァンギャルド造影集団などの前衛的グループがいくつか活躍し、独特の幻想世界を表現しています。戦前の代表的な前衛写真家 平井輝七(1900-1970)の幻想的でシュルレアリスム的な作品「月の夢想」「モード」「生命」他、1940年代はシュルレアリスムが弾圧されてきましたが、その後1950年代には日本でも「国際主観主義写真展」と題された展覧会が開催されました。これは表面的ではない内側の心理性をも自由に表現しようとする試みであり、写真展には奈良原一高なども参加しています。今回の展示作品は「日蝕」。また現代のアーティストである草間彌生横尾忠則などの作品も一堂に見ることができました。

1980年代以降、技術の進歩によってパソコンが普及しデータ処理が簡単にできるようになり、フォトモンタージュの技術もデジタルに移行していきます。現在ではデジカメで撮った写真を素人でも気軽に加工できるようになったことはよいことですが、写真の作品性というものをより考えるようになってきた今日この頃です…。

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【コラージュとフォトモンタージュ展】 東京都写真美術館
- Collage and Photomontage - 2006年11月3日(金・祝)→2006年12月17日(日)
■第1部 序章 写真がコラージュされ始めた時期
写真の黎明期にそのころの写真では技術的に不可能な事を表現するために、合成(コラージュ、フォト・モンタージュ)することにより写真家の意図に沿った、表現として完成度の高い作品をめざしました。
■第2部 前衛美術との関係 20世紀初頭の前衛美術運動との関係
ダダ、シュルレアリスム構成主義といった20世紀初頭の前衛美術は様々な美術的な技法を取り入れていますが、特に写真のコラージュ、フォト・モンタージュを使った作品を多く見ることができます。写真を使う事により、作品によりリアルな社会へのメッセージや風刺、超現実性といった要素を作品の中に取り入れていきました。
■第3部 主観主義写真と現代美術との関係 現代美術との関係
現代のコラージュ作品は写真家だけではなく、画家や版画家といった他のメディアの美術家にも使われています。描くと言う行為よりの既存のイメージである写真を使ったり、貼り付けたりする行為によって作品を再構成し、新たな作品を創り出していきました。

すぐわかる作家別 写真の見かた
フォトモンタージュ 操作と創造―ダダ、構成主義、シュルレアリスムの図像
ジョン・ハートフィールド―フォトモンタージュとその時代
Man Ray's Paris Portraits: 1921-1939
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