Vol.230 静寂の中で「石内都:mother’s」 〜 東京都写真美術館

Vol.230 静寂の中で「石内都:mother’s

東京都写真美術館にて、昨年の第51回ヴェネツィアビエンナーレ日本館での展覧会を記念して、未発表の作品が数点そして新たな映像作品も加えられた石内都氏の完全版「mother's」が開催されました。石内氏は1979年に木村伊兵衛賞を受賞し、その後ニューヨーク近代美術館などに作品が収蔵、その他多くの展覧会が催されるなど国際的に活躍する写真家です。
金曜日には学芸員による展示解説がされる時がありますが、今日は偶然にもその時間に石内都氏が会場にいらっしゃって、撮影への思いやこの場所での展示について話を聞くことができました。「ハードな写真だけど、その前に佇み疑問を持ってほしい。どのような過程を経てそれらがここにあるのか…。」

今回のテーマは、84年の波乱の半生を背負った「母」の遺品のひとつひとつを「モノ」として着目したシリーズです。亡くなる直前の母の肌のクローズアップ…母の遺品の中から実際に身につけていた衣装や、使いかけの口紅や靴たちのポートレート…モノとの対話があります。

初期の3部作「絶唱横須賀ストーリー(1977)」や「APARTMENT(1978)」「連夜の街(1981)」から厳選された過去の記憶。館内に置かれたいくつかのディスプレイからは、身に付けていた衣装の質感とディティールを追った映像などが流しだされていました。死者の遺品をテーマにするという今までにない佇まいの中、モノに宿るものから伝わるインパクトはとても強いものでした。

→写真はフォトログに掲載(The photograph is published in the gallery)