Vol.216 大正モダニズムと広告展 〜 アド・ミュージアム東京

Vol.216 大正モダニズムと広告展 〜 ア

汐留のアド・ミュージアム東京で特別企画として「大正モダニズムと広告展」が開催されている。(9/23まで) この時代の広告やポスターにとても興味があり、最近はいろいろな角度から展示されているものを見る機会がある。広告・印刷、写真・絵画、歴史・文化…それぞれの角度から見るのだけど、もちろん同時代の色合いは同じであり…モダンな匂いがする、広告にはその時代の背景なども映し出されとてもおもしろい。
大正時代になると、広告に関する書籍・文献なども多く出版され、各団体なども設立され始めた時期だ。広告研究も活発で制作技術も革新的になる。会場を入るとすぐに、日本髪を結った女性をモデルにした看板やポスターが展示されていた。油彩と思われる化粧品や飲料の広告だ。また、当時の映像などが投影されたり、下記のようなテーマでさまざまな作品を見ることができる。
展示の中でも2人の先駆者が挙げられている。
当初の広告原画は油彩などの手書きが多く、それらを写したりする作業から新たに商業美術家と称される人たちが出てきたのであるが、新たな分野としてそれを確立した中心人物が「杉浦非水」(1876-1965 本名 朝武・つとむ)である。その日本画はとても魅力的だ。後に言われるグラフィックデザイナーの第一号ということになる。また、それまでの手法にその時代の憧れでもある西洋文化(アール・ヌーボー)などを上手く取り入れ、独自の図案・デザインを多数手がけた。アール・ヌーヴォーの寵児とも言われた。展示作品の中の「星製薬株式会社」のポスターなどもミュシャ的なイメージを感じさせた。(「杉浦非水」は、現在の多摩美術大学創始者の一人としても名を連ねている。)

そして、日本の広告史の中でも表現の革新者として知られているアドライター「片岡敏郎」。今で言うとコピーライターというところだ。当時広告のコピーなどの文は、ほとんどが店主など広告主の視点で書かれていた。それを消費者である庶民の目線で表現する手法を確立した人でもある。当時、森永の広告を見て自分のほうがよいものを作れると考え、この仕事を始めたと言う。「オラガビール」「スモカ歯磨」などよく知られる傑作も多い。

ディレクターとしての代表作に「日本初の美人ヌードポスター」としても知られている「赤玉ポートワイン」(大正11年)のポスターがあるが、この時代の広告に興味がある人ならどこかで見たことがあるかもしれない。その当時初めてのセミヌードという斬新なアイデアと新鮮な構図で、商品のイメージ的戦略にも大きく貢献したのであろう。そして、現在のワイン普及のきっかけになったのも、赤玉ポートワインだったという。ちなみに「サントリー」の社名は、「赤玉ポートワイン」の日の出のラベルに描かれている SUN(サン)と創業者の名前でもある「鳥居信治郎」の鳥居(トリイ)が繋がってできたものだそうだ。
・サントリー 山崎蒸溜所 工場へ行こう ・サントリー 山崎蒸溜所 Blog


以下が今回の展示作品のテーマである。

第一部のテーマは、大衆社会の成立と「変わる」広告
・広告に見る対象の美意識と香り
・消費社会の到来と広告
・女性と子供を意識した広告
・大衆メディアと広告
・大衆娯楽の登場と広告
・震災と復興の時代
第二部は、対象モダニズムと開花する広告表現
・文化の大衆化と広告表現
・技術革新が広げた広告表現の可能性

大正モダニズムと広告展 〜 アド・ミュージアム東京

紙上のモダニズム ~1920-30年代日本のグラフィックデザイン 日本の生活デザイン―20世紀のモダニズムを探る MADE IN JAPAN マッチレッテル万華鏡―明治・大正・昭和の登録商標燐票 Retoro‐Style〈1〉世界のレトロな挿絵コレクション・人物編 Retoro‐Style〈2〉世界のレトロな挿絵コレクション・動物編 Retoro‐Style〈3〉世界のレトロな挿絵コレクション・植物編

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