Vol.177 平安時代の雅な「薫衣香」を再現 〜 世界らん展2006

Vol.177 平安時代の雅な「薫衣香」を再

仕事帰りに隣駅で開催されている世界らん展に招待状をいただいたこともあり足を運んでみた。東京ドームの中は花の香りで溢れていた。色とりどりの蘭の花に、こんなにも品種があること…そしてこんなにも愛好家がいるなんて。小さな鉢植え〜花を使ったレイアウトデザインが各コーナーに広がる…和風のものからオリエンタル調まで。愛好家でなくても見ているだけであっという間に時間が経ってしまう。育てられた蘭や寄せ植え、ディスプレイなどには各審査があるらしい。ミャンマーの貴重な蘭の原種、ワシントン条約とのかかわりや絶滅が危惧されている蘭の保護活動についての展示もあり見ごたえがあった。
蘭を実際に育てているわけでもないし、自然の中で見る花のほうが好きだけど、会場の中の花のディスプレイ、花器や間接照明にはとても興味があった。蘭の花で平安時代の和風の空間を作り出しているコーナーでは、当時の香の名手と謳われた源公忠朝臣が処方したという仄かな香りが漂っていた。「薫衣香」という衣服に香りを移すためのお香で、平安時代には香により衣類や手紙などにその香りを焚き染めることが、もてなしや身だしなみとして行われたという。天然の香木が調合された仄かな香りは、なんとも言葉では表現できない。そのほかにも、圧倒されそうなくらいたくさんの花の中、日常では中々見ることができないエビネや、見たこともない種類の蘭などを見ることができた。平日というのにたくさんの人がいて、その中でもシニア世代のご夫婦と思われる姿がとても多かった。ご主人が集中して花の写真をとっていると、そこへ花の愛好家と思われる奥様が、自分も撮ってとばかりに入っていき注文をつけて撮ってもらっている様子がなんだか微笑ましかった。

世界らん展2006
世界らん展2006


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