Vol.73 上野の森で再び仮面に出会う(よみがえる四川文明)

よみがえる四川文明

連休の最終日、久しぶりに上野まで足を延ばした。
毎年このくらいの時期から、行きたい展覧会があまりに多くて時間を作るのに苦労する。特に上野周辺には大きな美術館や博物館が集まっていて、いろいろな展覧会が催され、どこから回ろうか迷うばかりだ。
上野の森美術館では今月末から「大兵馬俑展 〜今、甦る始皇帝の兵士たち〜」の展示開始の案内が、名前の通り西洋の美術作品専門の国立西洋美術館では「マティス展」。
それでも、今日はそれらの横を通り過ぎ、その奥の東京都美術館へ…一番会期が残り少ないこともあり中国で近年に発掘された文物「よみがえる四川文化〜三星堆と金沙遺跡の秘宝」を観ることに…。
館内のVTRでは、女子十二楽坊のメンバーが展覧会の内容について説明していたのは意外だった。開催する側もいろいろと工夫しているのかもしれないけど、少し違和感を感じたのは私だけか…イメージソングでもこの展覧会をサポートしているという。
中国の四川省は、中国のパンダの故郷でも知られているが、「四川文明」はこの地域で比較的近年に発見された古代文明の遺跡により発見され名づけられた。6年前(1998年)に世田谷美術館で展示された「三星堆−中国5000年の謎・驚異の仮面王国」でもかなり印象に残っていたものだが、今回もその遺跡の出土品である青銅器や金器、国宝級のものや世界未公開のものも含めて110点が集められていた。
祭事に使われていたという「青銅立人像」は台座も含めると高さ2メートル以上もある。青銅製の目が突き出たような特有の顔の「縦目仮面」などと共に、かなり大きくインパクトがある。とにかく仮面といっても今までの殷や周のものとは、かなり変わったイメージのものが多く、玉石器などは、細かい細工が刻まれ青銅製のものとともに緻密な手作業を感じさせる。今回、細かい装飾が施された「神樹」の部分的なものなども多く展示されていたけど、一番大型のもの(約3.8m)の全形が見られなかったのはちょっと残念だった。(当時小学生だった娘と見に行った6年前の展示では、そのあまりの大きさが衝撃的だったのだ)
これらの神器や仮面は、大きな遺構から発掘されたわけだけど、焼けているものや壊されているものが2つの坑にまとめて破棄されているような様は、政権や王朝の交替があったのかもしれない…と、その歴史の経緯を今回もいろいろと想像させた。
敦煌莫高窟」をはじめ「馬王堆漢墓」…その他、20世紀になってから多くの中国史の常識と言われていることが覆される発見が続いている。広大な国土だけに、まだまだ未知の文明が閉ざされている可能性だってあるのだ。これから年末にかけて「秦始皇帝兵馬俑」の展示もあるけど、中国の遺跡から目が離せない。