Vol.208 アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶

Vol.208 アンリ・カルティエ=ブレッソ

東京都写真美術館のホールにて、アンリ・カルティエ=プレッソンのドキュメンタリフィルムの期間限定上映が2週間だけ行われている。先日までの渋谷ライズエックスの上映スケジュールには時間をとれなかったので、ちょうどよいタイミングだった。
バッハのピアノが軽やかに流れる中、プレッソンが自身の作品や人生について語るドキュメンタリで、親交のあった写真家や劇作家(アーサー・ミラー)などとの自宅でのインタビューシーンや会話はとても貴重なものだ。映画監督やマリリン・モンロー、ココ・シャネル、彼女たちを撮影したときのエピソードなどを楽しそうに語る。何気なく撮影されたマリリンの素顔は普段誰もが見たことのない表情だった。セクシーな笑顔とはまた違う知的な彼女の一面がそこにはあった。それらを自分の言葉で説明し、大きなスクリーンでページをめくるように見られただけでもとても貴重な上映企画だ。
そして、ロバート・キャパらとともに設立した写真家集団「マグナム」の仲間たちとの思い出…プレッソンの写真は淡々と語るその微笑みと共に、何かオブラートのような柔らかいものに包まれているような気がする。それからプレッソンが一番大切にするのが構図…知識があってもよい写真は撮れないと言う。たくさんのものを見ること、そして一番の瞬間を切り取れる目を持つこと、そのためにも目を大切にするようにと話していた。その言葉の通り、美術館でよく絵を見て構図や色について語るシーンがある。そして街角のひとこまにも、その時の流れを先読みするようにカメラを向けて切り取る神技。最後には高い建物の上に座りながら「この街ではもう写真はとれない、デッサンをしよう」という言葉が印象的であった。彼にとって進化した街は混沌としすぎていたのかもしれない。20世紀にひとつの歴史を作ったプレッソン「写真は楽しい」と話す笑顔が忘れられない。

アンリ・カルティエ=ブレッソン Henri Cartier-Bresson
1908年フランスに生まれ、2004年8月3日9:30AM南フランスの自宅にて死去。95歳
2004年のその訃報は記憶にも新しい。

Fondation Henri Cartier-Bresson

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■パンフレットより
20世紀最大の天才写真家が人生の最期に"愛すべき記憶"と"決定的瞬間"の謎をはじめて語った、奇跡のドキュメンタリー。
20世紀の証人であり、自由を愛し、人生を愛した写真の神様。
その“決定的瞬間”とは?
アンリ・カルティエ=ブレッソンが自ら語る唯一のドキュメンタリー
2004年8月アンリ・カルティエ=ブレッソンの訃報が世界中を駆け巡った。95歳だった。 彼は、ロバート・キャパらとともに、写真家集団“マグナム”を設立し、ライカを片手に歴史的瞬間を撮った報道写真の先駆者だった。また、写真集『決定的瞬間』(英語版タイトル)で独自の写真美学を確立し、世界中の写真家に多大な影響を与え、写真を芸術の域に高めた写真家である。 人前に顔をさらすのを嫌い、自身についてほとんど語ることのなかった偉大なる芸術家が、人生の最期にはじめて、その半生と作品について語る。映画は当時93歳の本人と、親交のあった写真家エリオット・アーウィットや昨年惜しくも亡くなった劇作家アーサー・ミラーなどの貴重なインタビューで構成されている。カメラは、すべての人生の中に“決定的瞬間”を見いだす彼のまなざしそのものであり、彼はその瞬間を生き生きと語り、そして微笑む。そこには人生への愛が満ち溢れている。 カルティエブレッソンの死とともに写真の20世紀は幕をおろした。この映画はまさにカルティエブレッソンの“遺言”ともいうべき“奇跡”のドキュメンタリーである。

監督+脚本:ハインツ・バトラー
出演:アンリ・カルティエ=ブレッソンアーサー・ミラーエリオット・アーウィットイザベル・ユペール
スイス+フランス/2003年/カラー/72分/ヴィスタサイズ/ステレオ/デジタル
字幕:寺尾次郎
アンリ・カルティエ=ブレッソン公式サイト
後援:フランス大使館文化部+スイス大使館
協力:マグナム・フォト東京支社+ライカカメラジャパン株式会社+ エールフランス航空
宣伝:ムヴィオラ
配給:ロングライド

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