Vol.195 春宵の響 〜 洗足池の風物詩

Vol.195 春宵の響 〜 洗足池の風物詩

洗足池のほとりにて、普段は中々聴く機会のない音に耳を澄ませた。
池の西岸の水辺と三連太鼓橋(池月橋)を舞台に、日も暮れたころ三味線と笛の音が響き渡る。仕事の打ち合わせのあと、偶然にも近くの池で演奏会があるということで散歩がてら友人と訪れてみた。今年で12回目になるという人間国宝でもある寶山左衛門さん一門の横笛演奏会「春宵の響」は、日本の伝統的な古典芸能を伝え自然の池で憩う時を持つ機会として催されている。今年は区立中学の三味線部の生徒も共演にチャレンジ。若い世代がよくここまで練習をして習得したものだと感心する。
能管、小鼓、篠笛、長唄、三味線…。
能管とは能や狂言で用いられる笛で、独特の音色や音階が奏でられる。水鳥と木々のささやく音…暗闇の中、池には奏者を乗せた木造船が船頭に漕がれてゆっくりと現れた。自然の残る池のほとりにはメタセコイヤの木々が立ち並び、その存在をひきたてている。
その船は我が国独特の技術で造られたという伝統的な和船を復元したもので、昔は和船が大田区沿岸で魚介や海苔をとるのに使われていたという歴史があるそうだ。近年、かつての船大工でもある4人のご兄弟の尽力によって、3艘の木造和船が復元した。設計図もなく体感した当時の技の記憶をたよりに再現されたというが、人の力というのはすごいものだ。今日の船頭はその中のお一人。
これらも含め伝統的な技や芸能を伝える努力が、たくさんの地域の人たちによって受け継がれているのだなと考えさせられた夕暮れだった。
主催・運営:「大田まちづくり芸術支援協会」

→写真はフォトログに掲載(The photograph is published in the gallery)