Vol.123 超ビジュアル− 映像・知覚の未来学 〜 東京都写真美術館

Vol.123 超ビジュアル− 映像・知覚の

恵比寿の写真美術館に買い物ついでに立ち寄った。夕刻近くなので今日は映像展示を見た。今年、美術館は10周年ということで特別企映像展が前期後期に渡り開催される。歴史装置ともいえる幻灯機や年代物のコレクションは滅多に見られないものだ。
印刷物にも使われている名和晃平氏の「Pixcell」というインスタレーションは、真っ暗な通路の先の真っ白な部屋にあった。中に入ると壁、床、天井がすべて白く、目の錯覚か部屋の空気までスモークをたいたように白く感じ、自分が浮いているような感覚になる。そして真ん中やサイドの壁にある透明なアクリル板と思われる直方体にシマウマやスニーカーが見えるのだ。その部屋での目による知覚は通常では感じられないものであった。その他にも錯視画といわれる「アナモリフォーズ」、横尾忠則氏の「皆は一人のために、一人は皆のために」というデジタルテクナメーション(CG作品)などなど。「ヴィジュアライズすること=視覚への欲求」が私たちをいかにつき動かしてきたかということを5つに分けられたサブテーマで展示されていたが、その中の言葉が印象的だった。
▽ イリュージョン系 「錯覚と幻影」
歪める/変容させる/コラージュする/映す・照らす/繰り返す
もはや問題は空間や光について語ることなくそこにある空間や光に語らせることなのだ。それは果てしない問いかけであろう。その問いが向けられている視覚それ自体が問いかけなのだから。
モーリス・メルロ・ポンティ
▽ アニメーション系 「動き・アニメーション」
動かす/止める/ずらす/色を変える/つかまえる
大昔から人間にはひとつの夢があった。それはかいた絵が動きだしたら…というのである。
手塚治虫
▽ 3Dバーチャル系 「3D 奥行き知覚」
とりまく/飛び出す/触れる/リアルにする/出現させる
アリスはたいそう静かにいいました。「よかったら、初めに、わたしの回りをすっかり見たいんです」
ルイス・キャロル 「鏡の国のアリス
▽ サイエンティフィック系 「視覚の拡大と縮小」
拡大する/縮小する/探索する/高精細にする/音をさぐる
テクノロジーにしっかりと直面できるのは五官の知覚を変化に応じさせることに習熟した真の芸術家だけである。
マーシャル・マクルーハン
アーカイブ系 「記録・ドキュメンテーション
写す/タイムスライスする/記憶する/蓄積する/伝える
人間は空間を知覚する、視覚によって − 棒切れ、細長い棒、針金、円柱、身体。相互に交叉、交接する表面。相互浸透する対象、広いパースペクティヴ、マッス、光。影の相関性、透明、反射反応…

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■東京写真美術館 インフォメーションより
高度な可視テクノロジーが日常となった現在、私たちには「視る/知る」という欲求が新たに加わり、時代とともにそれはより一層高まっています。本展では、写真・映画前史に始まる4000点で構築された独自の映像装置コレクションを5つのカテゴリーで総覧し、現代作品とともにひとつの超(メタ)ヴィジュアルな空間を作り出すことを試みます。例えば、国内外アーティストによる現代作品の蓄積や現代美術に拡張する新たなプロジェクトと、その源である映像装置に繋がる「視覚への欲求」を体感する展示やワークショップを行います。その目的は新旧の視覚メディアを等距離に往来し、新たな表現・創造のインスピレーションを得ようというものです。会期をふたつのパートに分け、モーショングラフィックス、ネット作品、プロダクト、ミュージックビデオ、ゲームやエンターテイメントまでを対象に展開します。開館10周年の節目に、科学と芸術の融合領域も含め常に変容する「映像メディア/メディア芸術」の新たな意味を探求します。ひろがる映像メディアの体験にどうぞご参加下さい。