Vol.197 カルティエ現代美術財団コレクション展 〜 東京都現代美術館

Vol.197 カルティエ現代美術財団コレク

木場公園にある東京都現代美術館(MOT)で、カルティエ現代美術財団コレクション展が開催されている。テーマは「The unexpected 思いがけない遭遇」、そして会場にピックアップされた作品のキーワードは「ファンタジー・驚き・親密さ」。絵画や彫刻、写真、映像、デザイン、インスタレーションなど32作家にわたる約60点の作品がが一堂に展示されている。これほどたくさんの作品を一度に紹介することは、同財団でも世界初の試みだそうだ。
MOTの中の広い通路…企画展の入り口前には縦横3mもある「プルーストの安楽椅子」/ Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディニ)作が存在感たっぷりに置かれていた。なんとなく座ってみたい感じがしたけど展示物だけに手も触れられないのは仕方ない。彼がデザインしたアレッシィの定番のキッチンツールは、どこかで見たことがある人も多いだろう。(彼の恋人のアンナをモチーフにした「ANNA.G」などの「ANNA FAMILY」は人気商品だ。イタリア本社工場には巨大な"ANNNA"像が置かれているそうだ)
展示作品で最初に目を引いたのは「小さなカテドラル」、こちらもAlessandro Mendini(アレッサンドメ・メンディーニ)作で色使いがきれいだ。小さな建物の中は細かい四角い金色の壁紙で覆われ、中央にデーンと金色のオブジェが鎮座している。そして低い祈りの声がその空間に響き渡り、外にでると同時に現実に引き戻される感じがするちょっとした不思議空間だ。ちなみにカテドラ(司教座)のある教会のことを「カテドラル」という。
フロアー最後のコーナーに移動すると思わず声がでるくらいのインパクト。物憂げな表情の巨大な女性が大きなベッドに横たわっている。フライヤーの写真にも使われているが、Ron Mueck(ロン・ミュエク)の「イン・ベッド」彫刻作品だ。その大きさは1.6×6.5×4メートル。肌の色合いから髪の毛一本までとても精巧にできていて、どんなに細かい部分を見ても作り物だと思わせる要素が見つからない…。じっくりと見ていると今にも何かつぶやきそうだ。肌のむらと質感や血管の透けている感じまでが、あまりにもリアルでここまで圧倒されると言葉もなくなるものだ。見事としか言いようがない。
そして上階に行くと引き続きインパクトのある作品が…いくつもの大きな目玉が床いっぱいに転がっていたのだ。アメリカのビデオ・アートの第一人者と言われているTony Oursler(トニー・アウスラー)の「ミラー・メイズ(死んだ目が生きている)」という作品は、背丈ほどもある大きな球体を目玉に見立て、それをスクリーンとして人の目の動きを投影するインスタレーション。部屋に入ると大きな動いている目玉がいくつも並んでいるので一瞬ドキリとする。よく見ないとわからないけど、その瞳は動いている人が映し出されたディスプレイを見ていた。
ゆったりと見ることができる作品たちは、どれも「う〜ん、おもしろい!」とつぶやいてしまうものばかり。いろいろなしかけ、驚くような表現との出会いの連続でなんだか楽しいひとときであった。
そんな中、映像のひとつに興味深いものがあった。Artavazd Pelechian(アルタヴァスト・ペレシャン)「我々の世紀」(1982)。人類の空への飛行願望とその心の歴史を、いくつかの映像を断片的につなぎ合わせることにより表現したものだ。中でも各シーンをフラッシュバックやモンタージュすることによる表現で、ただのコマの繋がりでは単調になってしまう当時の思いや葛藤がより短時間に凝縮されている。チャップリンのライムライトから始まり、宇宙への飛行と挫折、月への到達、兵器としての戦闘機…人と命と宇宙…その30分間は美術館にいることさえ忘れて見入ってしまった。観ている人の記憶や様々な思いへの連鎖までも意図されているようなインパクトのあるものだった。さらに、彼がゴダールの『新ドイツ零年』のロシア語版の「声」を担当していたこと、旧ロシアのアルメニア出身でもあり、私が特に好きな監督のセルゲイ・パラジャーノフと親しい間柄だったことなどを後で知りさらに驚いた。
アルタヴァスト・ペレシャン インタヴュー
(1995年10月山形国際ドキュメンタリー映画祭'95にて)

カルティエ財団は、横尾忠則杉本博司村上隆他、多くの日本人アーティストをヨーロッパに紹介している。今回は森山大道のモノクロ写真「新宿」12点の他に、ひと部屋を使った「ポラロイド、ポラロイド」(1997年)という作品の展示もあり、その不思議な空間に感覚が漂った。この作品は、自身のアトリエを3,262枚のポラロイドで再現したインスタレーションで、現在財団のコレクションとなっているそうだ。なんとこれらはわずか3日間で撮影されたという。独特のモノクロ世界の作品が多い写真家だけど、カラー作品は「ブエノスアイレス」以来。アトリエが再現されている部屋の中は、ポラロイドというタイルに埋め尽くされて摩訶不思議な雰囲気に満たされていた。
地階とはいえ、明るい外光が入る高い吹き抜けのスペースに展示されているのは、Marc Newson (マーク・ニューソン)の作品で、カルティエ財団のスポンサーシップにより2003年に製作された2人乗りプライベートジェット機のプロトタイプ「Kelvin40 Concept Jet」(ケルビン40)だ。「少年時代からの夢だった」…それを実現させるべく独特の無機質のフォルムで自分の作りたい飛行機を作ったという。「ケルビン」という名前は「惑星ソラリス」に登場する英雄の名から、40はニューソンの年齢からつけられたそうだ。彼は、AUの薄型の携帯「talby」のデザイン他、さまざまな企業のプロジェクトにも参加している。東京にまるで秘密基地のような録音スタジオが作られたというがとても興味がある。
館内の最後は、世界各国の街角を同時に映し出す Raymond Depardon(レイモン・ドゥパルドン)の映像作品、こちらもじっくりと見ているといくら時間があっても足りないくらい内容の濃いものだ。今回、日本での展示は初めてということで、様々なジャンルにわたる作品は現代美術に興味のある人は必見である。
展示作品の写真や見どころは、Maison des Musees de France(メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス)-MMF特集として掲載されている。


マーク・ニューソン 写真との対話、そして写真から/写真へ 森山大道 過去はいつも新しく未来はつねに懐かしい DAIDO MORIYAMA 「Buenos Aires」
マーク・ニューソンのすべてが詰まったDVD
写真との対話、そして写真から/写真へ 森山大道
「過去はいつも新しく未来はつねに懐かしい」
「DAIDO MORIYAMA「Buenos Aires(ブエノスアイレス)」」
ALESSI(アレッシィ) Design:Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ)
A di ALESSI ソムリエナイフ Parrot ブラック Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ) A di ALESSI ソムリエナイフ Parrot グリーン Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ) A di ALESSI ワインオープナー Alessandro M. レッド Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ) A di ALESSI ワインオープナー Alessandro M. ブルー Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ) ALESSI ワインオープナー Anna G.  Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ) A di ALESSI ワインオープナー Anna G. ブルー Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ) A di ALESSI ボトルキャップ Anna Stop 2 イエロー  Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ) Alessandro Mendini - Designed Painting - Painted Design (アレッサンドロ・メンディーニ)
A di ALESSI ソムリエナイフ "Parrot" ブラック
A di ALESSI ソムリエナイフ "Parrot" グリーン
A di ALESSI ワインオープナー Alessandro M. レッド
A di ALESSI ワインオープナー "Alessandro M." ブルー
ALESSI ワインオープナー "Anna G."
A di ALESSI ワインオープナー "Anna G." ブルー
A di ALESSI ボトルキャップ "Anna Stop 2" イエロー
Alessandro Mendini - Designed Painting - Painted Design

→写真はフォトログに掲載(The photograph is published in the gallery)